三鷹ストーカー殺人事件

三鷹ストーカー殺人事件(みたかストーカーさつじんじけん)とは2013年10月に東京都三鷹市で発生した殺人事件で、当時18歳の女子高生が殺害されました。本事件が誘引となり、リベンジポルノの関連法案が成立しました。

 

 

背景

 女子高生は学校内の学業成績も優秀であり、英語コースで成績はトップクラスで海外留学をしており、死亡時は高校3年生で都内大学の推薦入試を受ける予定でした。有名脚本家や有名現代美術家を親戚に持ち、母親も画家として個展を開くなど芸術一家の環境に育ちました。小学5年時に芸能事務所にスカウトされて芸能活動をしており、映画や民放ドラマにも出演していました。そのため、メディアは事件発覚当初は被害者を学業優秀で芸能活動をしている女子高生という形で報道していました。

 男性はフィリピンのマニラ市出身で、日本人を父に、フィリピン人を母に持つ混血児でした。フィリピンのマニラ出身でフィリピン人の母とともに1歳10ヶ月のときに来日。男性は両親に婚姻関係があり、日本国籍を持っていました。

 

 

事件の概要

 2011年10月頃、関西在住の男性が東京在住の女子高生と実名制SNSを通じて知り合い、同年12月から遠距離恋愛という形で交際を始まりました。男性は日比混血児の高卒フリーターだでしたが、南米ハーフの関西有名私大学生と偽って交際していました。

 約1年間交際していましたが、女子高生が2012年秋に外国留学するようになった頃から男性への別れ話が出ました。2013年春に女子生徒が留学を終えて帰国したましが、男性は執拗に復縁を求めました。女子高生は男性からの連絡をしぶしぶ取っていましたが、2013年6月からは携帯電話を着信拒否し、連絡を完全に絶つようになりました。

 復縁できないと思った男性は2013年夏から女子高生の殺害計画を練りはじめ、同年9月27日に男性は居住していた関西から、女子高生が住む東京へ高速バスで上京。この時友人に「4、5年ほどアメリカに行く。その前に彼女(女子高生)と話がしたい」と話していた。9月28日に武蔵野市吉祥寺の雑貨チェーン店で凶器となるペティナイフ(刃渡り13cm)を購入しました。

 男性が三鷹市の自宅のそばまで来ていることを知った女子高生は10月4日にストーカー被害を在籍高校の担任教諭らに相談します。学校側は近くの杉並警察署に電話で問い合わせ、署の担当者は女子高生の自宅を管轄する三鷹警察署に相談するよう指導しました。

 10月8日午前に女子高生は両親と三鷹署を訪れて「待ち伏せされている」などと男性のストーカー行為について相談します。三鷹署の警察官はストーカー規制法に基づき、女子高生が把握していた男性の携帯電話の電話番号に3回電話をかけたが電話に出ず、連絡するよう留守番電話に入れました。女子高生はその後に1人で高校に登校し、授業が終わった後で帰宅した際には両親は仕事等の用事で外出しており、自宅には女子高生一人でした。

 男性は昼過ぎ女子高生宅2階の無施錠の窓から侵入し、1階の女子高生の部屋のクローゼットに隠れて、殺害の機会をうかがっていました。クローゼットに隠れながら殺人事件まで友人にラインを通じて女子高生宅の電話番号とみられる番号を告げる形で室内に誰かいないか確認する電話をかけるよう依頼していましたが、その一方で「ふんぎりつかんからストーカーじみたことをしてる」「そのつもりなかったけどなんやかんやで押し入れの中。出たいけど出られへん」「三時間前のおれしね」「あー無事にかえりたいよぅ」「詰みだわ」と殺害に葛藤があるかのような言葉を送信していました。

 16時53分、男性は女子高生の部屋で潜んでいたクローゼットから出て、ペティナイフを持って女子高生を襲撃しました。男性は女子高生宅の外の道路にまで逃げた女子高生を追廻し、首や腹に11カ所の刺し傷や切り傷をおわせました(致命傷は3カ所あった)。16時55分に路上で倒れている女子高生が発見され、110番通報されました。18時30分に男性(当時21歳)はズボンに血痕があったことから警察官から職務質問され、事件への関与を認めたため、殺人未遂罪で緊急逮捕されました(男性は襲撃から逮捕されるまで、友人や母親に携帯電話で殺害を実行したことを告げた)。なお女子高生は帰宅した際に三鷹署の署員と電話で話しており無事帰宅したことを16時51分に伝えていましたが、電話を切った直後に事件は起きました。逗子ストーカー殺人事件を教訓に対策を強化した改正ストーカー規制法が5日前のか10月3日から施行された矢先のストーカー殺人でした。2013年10月11日に男性の供述から、路上に捨てられた凶器であるペティナイフが発見されました。

 

 

リベンジポルノ

 男性は7月22日に米国のアダルト動画・静止画共有サービスサイトで女子高生のニックネームにちなんだハンドルネームで自分の投稿スペースを作成し、10月2日から10月6日にかけて交際中にプライベートに撮影された女子高生にまつわる女子高生の性的な画像や動画をアップロードしました。さらに男性は10月5日から10月8日の殺害直後に逮捕されるまで、短文投稿サイトや巨大掲示板の復讐を扱うスレッド、地域掲示板の三鷹市に絡むスレッドで、三鷹で怨恨殺人を示唆するコメントなど被害者である女子高生Bとの関連を示唆しながら、自分がアップロードした米国のアダルト動画・静止画共有サービスサイトのURLを投稿しました。殺人事件がメディアで大きく報道されるにつれて、男性のネット投稿に気づいたネット住民によって女子高生の性的な画像や動画がダウンロードされ拡散しました。女子高生の性的な画像や動画が拡散していることは大手メディアでは当初は報道しませんでしたが、やがて一般紙でも本事件を報道する際に本件をリベンジポルノであるとして紹介するようになり、リベンジポルノが社会問題として認識されるようになりました。国会でもリベンジポルノが問題視され議論されるようになり、2014年11月19日にリベンジポルノへの罰則を盛り込んだ被害防止法が成立しました。

 

 

裁判

 2013年10月29日に男性は殺人罪、銃刀法違反、住居侵入罪で起訴されました。2014年7月22日に東京地裁立川支部で裁判員裁判が行われました。裁判員は6人中5人が男性という構成でした。

 検察は男性が高卒なのに関西有名私大学生と終始偽って交際し、女子高生と同時期に別の女性とも二股交際し、女子高生との約1年間の交際を経て、女子高校から別れ話を持ち出されると、執拗に「裸の画像を流出させる」と脅し始め、復縁が不可能と知った男性は殺害計画を決意し、犯行に備えてジムに通って体を鍛え、自己を鼓舞するかのような犯行メモを残していたことを提示しました。また男性の母親は2013年3月に女子高生から電話で「(男性に)手錠をかけられ、レイプされた」と訴えられたことなどを証言しました。

 女子高生の父親が被害者参加制度で法廷に出廷し、「(獄中で取材等を受けており)とても自己顕示欲が強くて達成感すら感じている。反省の気持ちも感じられない」「事件当日の午前中に娘から仮に自分が殺された場合について聞かれ『どんな方法を使ってでも敵をとる』と話した」「結婚13年目にできた娘で私たちの希望で光だった。(娘の死で)希望が消え、私たち夫婦の将来も消し飛ばされた」と述べました。

 被告人質問で男性は事件について「彼女を失った苦痛から逃れるために殺害を考えた」「脅してまで関係を続けるのはおかしいと思い、忘れようとしたが(気持ちが)積もっていった」「(殺害について)心の整理ができておらず混乱しているが、後悔している」「(遺族が)苦しんでいると想像できるが共感はできない。謝罪の気持ちはまだ抱けていない」「(性的な画像や動画の流出・拡散は)彼女と交際したことを大衆にひけらかしたかった。付き合った事実を半永久的に残したかった。かなり話題になると思った」「彼女の尊厳を傷つけたいという気持ちもあった」と話しました。

 また、男性・男性の母親の証言によって、貧困生活の中で狭い部屋の隣室で母親が交際相手と性行為をするあえぎ声を聞き、母親の交際相手から過酷な虐待を受け、母親が何日も家に帰ってこないことが日常茶飯事で近所のコンビニで消費期限の切れた弁当を無心する生活を送り、母親も交際相手から暴力を振るわれていたことなど、「児童虐待」「ネグレクト」「DV」の三重苦に苦しめられた男性の成育歴が法廷で語られました。

 7月29日、検察は論告で「逃げる女子高生を追いかけ、路上でまたがり多数回刺しており、極めて悪質。(性的な画像や動画の流出・拡散は)殺害だけでは飽き足らず、女子高生を侮辱し名誉を汚した。犯行は執拗、残忍で大胆。被害者に落ち度はなく経緯に酌量の余地はない」と述べ、無期懲役を求刑しました。女子高生の母親は「被告は娘の未来、夢、希望、尊厳も全て冒涜した。二度とこのような事件があってはならない。極刑で償うべきだ」と述べました。弁護側は最終弁論で「殺意は強固ではなく、幼少期から虐待を受けるなどした生育歴が心理的負担になった」として懲役15年が相当と主張していました。

 8月1日、東京地裁立川支部は「強固な殺意に基づく執拗で残忍な犯行。高い計画性も認められる」「(性的な画像や動画の流出・拡散は)極めて卑劣」「被害者に落ち度はなく、犯行動機はあまりに一方的で身勝手」「成育歴の影響が背景にあるとはいえ、反省を深めていると認められず、被害者や遺族に謝罪の言葉すら述べていない」とした一方で、「若くて更生可能性がある」等として男性に対し、有期刑の上限である懲役22年を言い渡しました。女子高生の両親は懲役22年の判決について「失望した。なんでこんなに軽いのか、全く理解できない。(判決は)リベンジポルノの犯罪の本質、被害の大きさを全く理解していない」とのコメントを出しました。男性は、8月4日付で東京地裁立川支部の裁判員裁判判決を不服として控訴しました。男性の代理人弁護士は、控訴の理由を「過酷な成育歴が十分に考慮されていない」と説明しています。

 

 

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